江戸の風情残る宿坊で、季節ごとに味わうとうふ料理~何度でも訪れたくなる癒しのひととき~【食のコラム】

江戸の風情残る宿坊で、季節ごとに味わうとうふ料理~何度でも訪れたくなる癒しのひととき~【食のコラム】

伊勢原市にある大山(おおやま)は、古くから「雨降山(あめふりやま)」とも呼ばれ、信仰と自然が息づく霊峰として親しまれてきました。麓に広がる門前町には、江戸時代から続く宿坊が点在し、参拝者や旅人を迎えてきました。大山詣での道中、疲れた心身をそっと癒してくれたのが「とうふ料理」です。実は大山名物のとうふに使われている大豆は、大山で育てられたものではありません。 かつて信仰を広めるために諸国を巡っていた御師(おし)が、檀家から初穂料として受け取ったものや大山詣でに訪れた人々が宿坊に持参したものが自然と集まったのです。その大豆と大山の名水が出会い、ここでしか味わえない、深い旨みのとうふが生まれたのです。そして現在も大山では、多くの宿坊や旅館がそれぞれ趣向を凝らした「とうふ料理」を提供しており、名物として多くの人に親しまれています。静かな宿坊の空間で、名物のとうふ料理と秋の味覚を堪能してみませんか。

※本コラムは、かながわガイド協議会構成団体である「いせはら観光ボランティアガイド&ウォーク協会」より寄稿いただきました。

目でも楽しむ、秋のひとさら

今回訪れた宿坊「小笠原旅館」のとうふ料理は、季節ごとにメニューが変わるのが特徴。ちょうど秋の献立に切り替わったタイミングで、器も料理に合わせて提供されるため、目でも季節を味わえます。最初に登場したのは、秋の恵みをぎゅっと詰め込んだ一皿。ぶどうのように見えるカボチャの種の素揚げ、蓮の葉を模した器に盛られたイカと大黒しめじ、柿の器に入ったリンゴと梨の白和えなど、旬の食材が美しく並びます。食前酒の梅酒とともに、秋の風味をゆったりと楽しみました。

熱々のできたて湯葉で、心がほっこりする瞬間

豆乳を火にかけ、ふつふつと音を立てながら膨らんできたら、湯葉の食べ頃。お箸でくるっとすくい取り、できたての湯葉を口に含むと、やさしい甘みがふわっと広がります。いろり鍋の火が消えたら「にがり」を加え、八の字を描くように混ぜてしばらく待つと、豆腐が完成。しょうゆを少し添えて、素材の旨みをじっくり堪能しました。

湯葉纏う 秋の宝珠

煮物、蒸し物に続いて登場したのは、竹籠に美しく盛られた雅な一品。海老のすり身で包まれた栗を、細かく刻んだ湯葉で覆い、まるでいが栗のような趣ある姿です。添えられた抹茶塩でいただきました。 食事は秋の味覚が満載。栗おこわに土瓶蒸し、カボスをきゅっと絞れば、香りと旨みが一層引き立ちます。 そして最後は、豆乳きなこプリンのデザートをお抹茶とともに。やさしい甘みが、食事の余韻を静かに締めくくってくれました。

江戸時代の風情が色濃く残る玉垣の道、時を遡るような感覚に包まれて

大山の麓に広がる門前町は、鈴川の清流が横を流れ、近くには禊ぎの滝が佇む、自然豊かなエリアです。春の桜から秋の紅葉まで、四季の彩りが訪れる人々を迎えてくれます。川のせせらぎに耳を傾けながら、小笠原旅館から徒歩1分の場所にある禊ぎの滝(愛宕滝)へ。食事と散策の両方を楽しめるのも、この地ならではの魅力です。 大山を訪れる際は、ぜひ入り口にそびえる三の鳥居をくぐり、門前町の散策を楽しんでみてください。宿坊の佇まいを眺めつつ、自然と歴史に触れる“プチトリップ”は、きっと心に残るひとときになるでしょう。 季節ごとに表情を変える大山の門前町。次は、どの季節に訪れてみましょうか。 

場所 :小笠原旅館
住所 :伊勢原市大山415
電話 :0463-95-2753
アクセス:伊勢原駅北口よりバス「大山ケーブル行き」乗車「あたご滝」下車徒歩1分
駐車場:あり(普通車4台)
お食事:要予約(4,950円~) *宿泊は大山講の方限定

※本コラムは、かながわガイド協議会構成団体である「いせはら観光ボランティアガイド&ウォーク協会」より寄稿いただきました。
  • 神奈川県PRキャラクター かながわキンタロウ
    神奈川県PRキャラクター かながわキンタロウ
    ※情報は変更されている場合があります。各公式サイト等にて最新の情報をご確認ください。

当サイトでは利便性の向上のため、Cookieを使用しています。
サイトの閲覧を続行した場合、Cookieの使用に同意したことになります。
詳細はクッキーポリシーをご確認ください。