神奈川の県花「ヤマユリ」について学ぼう

神奈川の県花「ヤマユリ」について学ぼう

夏の山道で、ふいに甘く濃い香りに包まれることがあります。あたりを見回して、もし白い花びらと黄色い筋、紅色の斑点をまとった花があれば、それがヤマユリです。

じつはこのヤマユリ、神奈川県の県花でもあるのですが、近年「見かけなくなった」という声も増えています。今回はそんなヤマユリの現状と、県内での保全の取り組み、県内の鑑賞スポットをご紹介します。

ヤマユリってどんな花?

ヤマユリは、ユリ科ユリ属の球根植物です。本州を中心に自生する日本特産のユリで、平地から山地の半日陰の斜面などに咲いています。

開花期は例年7〜8月頃。花の直径は20cmを超えることもあり、日本に自生するユリのなかでも最大級です。1本の茎に数輪から、よく育った株では10輪ほどの花をつけ、強くて甘い香りを放ちます。

ヤマユリが神奈川の県花になったのはなぜ?

そんなヤマユリが神奈川県の花に選ばれたのは1951年(昭和26年)のこと。

かつて丹沢や三浦半島など県内各地に自生し、県民にとって身近な花として長く親しまれていたこと、そして幕末の開港後〜昭和初期にかけて、ユリの球根が日本から欧米へ大量に輸出されましたが、この大半が横浜港を経由していたという歴史が選定された背景にあるといわれています。

ちなみに神奈川県では、県花がヤマユリ、県木がイチョウ、県鳥がカモメと定められています。

ヤマユリは絶滅危惧種に指定されている?

現時点で、ヤマユリは環境省の全国区分レッドリスト※には掲載されていませんが、各都道府県が独自の基準で定めているレッドリストでは、京都府では1963年以降、府内での生育確認記録がないことから絶滅種に、長野県では準絶滅危惧に指定されています。

このように、全国的にはレッドリスト掲載種ではない一方で、地域によっては深刻な減少が起きているのが現状です。

※レッドリストとは、絶滅のおそれがある野生生物の種をまとめたリストのことです。環境省が全国的な状況をもとに作成するもののほか、各都道府県が地域ごとの状況に応じて独自に作成しているものもあります。

ヤマユリが減っている背景

減少の背景には、球根の違法採掘や里山の管理放棄、土地開発、シカ等による食害など、時代ごとのさまざまな事情が重なっています。野生の球根は食用にもなるため、食糧難の時代には大量に掘り起こされ、その後も園芸目的の違法採掘もつづきました。

さらに、ヤマユリは一度減ると回復するのに時間がかかります。種から花が咲くまで早くても5年、通常は6〜7年。しかも自然の環境下では、種が土の中で発芽してから地上に芽が出るまでに時間がかかるため、実際に育つ株はごくわずかといわれています。

適切に管理された環境なら発芽率を高めることもできますが、自然の中ではそう簡単にはいきません。このことが、なかなか個体数が増えない理由のひとつでもあります。

神奈川県内のヤマユリの現状

神奈川県レッドデータブック2022年版によると、現在神奈川県ではヤマユリは絶滅危惧種として指定されていません。

ただし、県内各地で自生が確認されているものの、以前より数が減少しているのは事実です。

かつて里山の手入れが行き届いていた時代には、道沿いや斜面のあちこちにヤマユリが咲いていたといいますが、高度経済成長期以降、住宅地の開発や里山の管理放棄が進む中で、その数は徐々に減っていきました。

県内での調査でも数か所で見られるだけで、あっても1〜2株が点々と咲く程度という場所が多く、かつて里山に当たり前にあった風景が失われつつあると報告されています。(※)

※公益財団法人かながわトラストみどり財団による県内の保全樹林地等での調査

神奈川では県花「ヤマユリ」を守る取り組みも実施

  • 写真提供:(公財)かながわトラストみどり財団
  • 写真提供:(公財)かながわトラストみどり財団
  • 写真提供:(公財)かながわトラストみどり財団
こうした現状を受け、神奈川県内の各地で保全や復活に向けたさまざまな取り組みが行われています。

公益財団法人かながわトラストみどり財団が主導する「かなユリ・チャレンジ」では、県内のヤマユリ自生地の再生や都市部の自然環境の保全を目指しています。

市民ボランティアとともに草刈りなどを行って、ヤマユリが育ちやすい環境を整えたり、採取した球根を平塚市の社会福祉法人進和学園にて育成してもらい、そこで増えた球根を緑地に戻すなどして、少しずつ自生地の再生に向けて取り組みをつづけています。

なお、同プロジェクトでは新たな取り組みとして、県内のヤマユリ開花情報の調査も行っています。もし神奈川県内でヤマユリを見かけた際は、ぜひ調査にご協力ください。
また、秦野市では秦野中ロータリークラブがボランティアと協力し、2010年頃から渋沢丘陵ハイキングコース沿いを「ヤマユリの里」として整備してきました。

初年度には球根300株と種2万粒を植えることからスタートし、年数回の草刈りや落ち葉かきなどの環境整備を行いながら、種から発芽させた株を毎年植える地道な活動をつづけています。その結果、近年では600株ほどのヤマユリが咲くまでになりました。

また、川崎市麻生区でも「麻生区ヤマユリ植栽普及促進事業」として、地域住民や団体、行政が連携し、球根の配布や植栽活動をつづけています。

ヤマユリが見られる神奈川の主なスポット一覧

こうした県内各地での活動の積み重ねによって守られてきた、神奈川の県花ヤマユリ。

ぜひ今年の夏には、県内のヤマユリが見られるスポットへ足を運び、甘い香りを感じてみてください。

また、もしどこかで自生するヤマユリを見つけた際は、そっと鑑賞するだけにとどめておき、みんなでヤマユリを次の世代へ残していきましょう。

  • 神奈川県立四季の森公園【横浜市】
    横浜市の北西部に位置する「四季の森公園」。1980年代の市街化の波から貴重な樹林地を守るために整備され、市街地にありながら日本の原風景「里山」が残る公園です。園内にはホタルが舞う湿地や水田、周囲を囲む雑木林など、どこか懐かしい風景が広がっています。自然のスポットを散策しながら季節ごとの花々を愛でるひとときは、まさに癒しの時間。なかでも約1,500㎡もの広さを誇るしょうぶ園では、6月中旬頃に見事なハナショウブが咲き乱れ、訪れる人々の目を楽しませてくれます。散策路も整備されており、ゆっくり歩きながら花を観賞することができます。また、子どもたちが安心して遊べる遊具広場やじゃぶじゃぶ池もあり、家族連れで楽しめるのも魅力。展望広場にあるジャンボすべり台はスリルと爽快感を味わえますよ!
  • 神奈川県立 恩賜箱根公園【箱根町】
    箱根の中心地に位置する県立の公園。明治時代に皇族の避暑や外国からの賓客のために建てられた「箱根離宮」跡地が公園として整備されました。富士山を正面に満々と水をたたえた芦ノ湖を見下ろす景観は「かながわの景勝50選」にも選ばれた県を代表する美景です。手入れの行き届いた樹木や四季の花々が由緒ある庭園ならではの歴史とロマンを漂わせています。ひときわ緑が眩い中央広場には、休憩室や箱根離宮の資料を集めた展示室を備えた「湖畔展望館」が。2階の茶処「緑賜庵」で、かつての箱根離宮さながらの眺望を楽しみながら優雅な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。公園スタッフと一緒に園内を散策するガイドツアーやレンタサイクルもあるので、思い思いの時間をお過ごしいただけます。
  • 日比谷花壇大船フラワーセンター【鎌倉市】
    鎌倉市にある植物園「日比谷花壇大船フラワーセンター」。門をくぐるとまず目に留まるのは花いっぱいに装飾された大きな石のモニュメント!園内は色とりどりの花が植わった花壇があり、季節ごとの花々を楽しむことができます。5月上旬~中旬に見頃を迎える「シャクヤク園」は、数万本の花が咲き誇る全国有数の規模。濃淡様々なピンクのシャクヤクが観光客を歓迎してくれます。また、バラ園やツバキ園、ドーナツ型のユニークなグリーンハウスなど、趣向を凝らした多くのエリアがあります。散策に加えて、園内のカフェ「大船カフェ ガーデンテラス」で一休みすることも可能です。ウッドデッキスペースで優雅なランチタイムを過ごすことができるほか、テイクアウトできるジェラートやソフトクリームもあるので、緑が気持ち良い芝生広場でピクニック気分を味わうことができます。
  • 遠藤まほろばの里 藤沢えびね・やまゆり園
    エビネ、ヤマユリ、ヤマアジサイなど、130種の山野草が次々と咲く雑木林の中をゆったりと散策できます。
  • 弘法山公園【秦野市】
    浅間山・権現山・弘法山の3つの低山からなる県立自然公園で、四季を通じてハイキングが楽しめます。権現山山頂の展望台からは、相模湾から富士山までを一望。国土交通省の「関東の富士見百景」に選出されています。春には、1400本以上の桜が咲き誇る名所としても有名で、「かながわ花の名所100選」にも選ばれています。桜が満開となる3月下旬~4月上旬には「はだの桜まつり」が開催され、飲食店の出展やライトアップなど昼も夜も楽しめます。
  • 蓑毛自然観察の森
    四季折々の自然の変化を楽しめる「蓑毛自然観察の森」。クヌギやコナラの落葉樹林が広がり、春には新緑、秋には紅葉、冬には落葉の風景が楽しめます。7月上旬から8月中旬には美しいヤマユリが咲き誇り、自然の美しさを存分に感じられます。鳥や動物たちも周囲に生息しており、自然とふれあえる憩いの場として、訪れるたびに新しい発見があるでしょう。自然いっぱいのなかで心癒される時間をお過ごしください。※鹿の被害をうけ、自生しているユリはほとんどない状況です。
  • 震生湖【秦野市】
    1923(大正 12)年 9 月 1 日の関東大震災でこの 付近は幅約 200mにわたって陥没し、市木沢がせき 止められ、震生湖が誕生しました。震災から 100 年近 く経過しても「湖面」「崩落地」「堰止地」が確認でき、 令和 3 年 3 月 26 日に国登録記念物に登録されました。そして令和5年9月に誕生から100年を迎えます。
  • 神奈川県立 観音崎公園【横須賀市】
    横須賀市の東端、東京湾に突き出た観音崎のほぼ全域に広がる広大な公園。6月には各所にアジサイが咲き、青や紫、白、ピンクなどの花々が園内を彩ります。シイやタブを中心とした照葉樹林の中を散策したり、海上を行き交う船舶を眺めたり、海岸沿いでのバーベキューなど、さまざまな楽しみ方ができます。園内には、日本最初の洋式灯台「観音埼灯台」や、東京湾を中心とする海や自然を学べる「観音崎自然博物館」のほか、公園周辺には横須賀や三浦半島ゆかりの作家の作品を展示する「横須賀美術館」もあり、公園を含む周辺地では、自然・歴史・文化と、多彩な魅力を楽しむことができます。
▲トップ画像提供:(公財)かながわトラストみどり財団

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