宮永岳彦(1919~1987)は、「光と影の華麗なる世界」と評される美しい女性像を描いた洋画家です。しかしそれだけにとどまらず、ポスター、雑誌の表紙、装丁、童画、水墨画など、幅広い分野の作品を制作しました。 

宮永がグラフィックデザイナーとして最も活躍していた 1960 年代当時、広告や出版物などの「商業美術」は、芸術的価値を追求した「純粋芸術」に比べて軽視されていました。そうした風潮の中で、洋画家である宮永が「商業芸術」を手掛けることには、批判の声もありました。それでも宮永は、どの分野の作品にも真摯に向き合い、圧倒的な功績を残すことで、彼が描く全てのものが芸術であると示したのです。 

本展では、宮永作品を年代順に紹介し、様々な作風の作品を並行して制作した多才さをご覧いただきます。「美しいものを描くことで社会の役に立ちたい」という願いを胸に、作品を描き続けた宮永の芸術をどうぞお楽しみください。